【フランスワイン】ニースのワイン産地AOP Belletオープンデー

Last Updated on 2025年12月7日

ニースと聞くと、海辺のプロムナードや旧市街の賑わいを思い浮かべる方が多いと思います。

ニース海沿い

しかし街の背後には丘陵地帯が広がっており、そこにはフランスワインで最も小さなAOCのひとつ、「AOP Bellet(ベレ)」がひっそりと息づいています。

ニース山沿い

生産量は限られており、地元でも幻のワインと呼ばれるほど希少なAOCです。

そんなベレのワイナリーが5月と11月の年に2回、一斉に扉を開く日があります。その名もJournées Portes Ouvertes AOP Bellet(オープンデー)。

このイベントでは、普段は一般客向けには開いていない、もしくは個別予約が必要なワイナリーを含め、多くのワイナリーで見学やワインの試飲をさせてもらえます。

クラスメイトはもちろん、ニースに住む人たちさえ知っている人が少ないこのイベント。土曜の早朝、海外での研修旅行から一足お先に帰国後の訪問でお疲れ気味ではありましたが、この地区の運命の一本を求めに駆けつけました。

AOPベレの概要

ニース内陸の小さなAOP

ニースの背後に広がる丘陵地帯に位置するAOPベレは、フランスでも最小規模のアペラシオン(原産地保証付きのブランド)のひとつで、栽培面積はわずか50haという希少な産地です。

標高は200〜300m、地中海からの陽光とアルプスから吹き下ろす強い風が交わる独自の気候に恵まれ、ブドウは「レスタンク」と呼ばれる急斜面の段々畑に深く根を伸ばしています。

独特なぶどう品種

白ぶどうはロール(ヴェルメンティーノ)、黒ぶどうはフォル・ノワール、ブラケといった地元固有の品種のほか、グルナッシュ、サンソーなどが栽培されています。

ここでのワイン作りは古く、古代ギリシャ時代に端を発するとされており、また今では多くの生産者がオーガニック農法やビオディナミを実践しています。

主なワイナリー

AOPベレのワインを手がけるワイナリーの数は、現在たった9件。主要なワイナリーについて、今回、足を運んだところからご紹介します。

 Château de Bellet (シャトー・ド・ベレ )

おそらくベレ地区で1番有名なワイナリーがこちらです。ブティックはかつての礼拝堂を改装したユニークなところにあります。

ワインツーリズムにも力を入れており、ブティック周辺のぶどう畑は自由に散策できる散歩コースが設定されています。道なりには小さな看板があり、こちらで栽培されているぶどうの品種などを学べるようになっています。

ワインのラインナップは3種類。白ワインは香り豊かで気品があり、ロゼはまるで淡いヴェールのよう、赤はしっかりと骨格があり、堂々たる佇まい。有機栽培で、自然への敬意を忘れない造りが特徴です。

1番高級のラインナップには、
旨味のようなものを感じました

URL:https://www.chateaudebellet.com

最寄りバス停:バス62番 Crémat(徒歩20分ほど)

予約:通常は要予約

Clos Saint-Vincent(クロ・サン・ヴァンサン) 

園主のジオさんと息子さんによる家族経営の小さなワイナリーです。ワイン通の間で名実共に高い評価を得ている、ベレ地区の名門のワイナリーです。

こちらのワイナリーからも、丘に広がる段々畑のぶどう畑と地中海の絶景を見渡すことができました。

こちらではビオディナミを実践し、ワインは土地の力がそのまま反映されているような、深い香りと緻密な構造が特徴です。

定番ではないというこちらの一本は買い

URL:https://www.clossaintvincent.fr

最寄りバス停:バス52番 Crémat(徒歩15分ほど)

予約:通常は要予約

Domaine de la Source(ドメーヌ・ド・ラ・スルス) 

こちらも家族経営の小さなワイナリーです。ドメーヌは外観・ブティック・畑共々クリスマス仕様。派手さはなくとも、真心がじんわり残るワイナリーです。

ブティックを経由して見学させてもらったブドウ畑は丘陵に寄り添うように広がっており、まるでニースの奥座敷のような静けさ。

白ワインは凛とした清涼感があり、ロゼは海風を思わせる軽やかさ、さらにぷっくりしたボトルの限定モノセパージュからは、このワイナリーの丁寧な仕事ぶりを感じました。

こちらのワインも購入

URL:https://www.domainedelasource.com

最寄りバス停:バス62番 Saquier(徒歩で30分ほど)

予約:通常は要予約

Château de Crémat (シャトー・ド・クレマ)

シャトー・ド・クレマは歴史的建造物としても名高いワイナリーです。

建物はニースのマセナ界隈を連想するカラフルな色合いで、館内のいたるところにC.C.のモノグラムがあります。マドモワゼル・シャネルはモノグラムから自身のブランドロゴの着想を得たといわれています。

オープンデーは敷地内でクリスマスイベントが開催されており、飲食ブースや地元のアーティストが出店して盛り上がっていました。

また、シャトーの近所にある家族経営のワイナリー、Domaine de Toasc(ドメーヌ・ド・トアスク)のワインも試飲購入できました。ここでは各ワイナリーの白ワインのみ試飲しました。

URL(Château de Crémat):https://www.chateaudecremat.com

URL(Domaine de Toasc):https://www.domainedetoasc.com

最寄りバス停:バス52番 Crémat(バス停からすぐ)

予約:ガイドへの参加は要予約

なお、Domaine de Toascにも足を運んでみたものの、こちらは事前予約が必要とのこと。 ちょうど出かける直前らしい幼いご子息から「今日は開いていないよ」と門前払いされてしまいました。

Collet de Bovis(コレ・ド・ボヴィス) 

1974年からワイン造りに人生を捧げているジャン・スピッツォ氏がつくりあげる、個性派のワイナリーです。

ワインだけでなく、絵画・舞台芸術なども展示され、芸術とワインが互いに呼応し合う、まさにベレの文化的交差点と紹介されています。今回、オープンデー対象のワイナリーでしたが、残念ながら私が訪問した時は閉じており、見学や試飲はできませんでした。

URL:https://www.colletdebovis.com

最寄りバス停:バス52番 Saint-Vincent(徒歩15分程度)

予約:通常は要予約

2日間で訪問したのは上記の6件。その他のベレのワイナリーも簡単にご紹介。

Domaine de Vinceline(ドメーヌ・ド・ヴィンセリーヌ) 

家族経営の小さなワイナリーです。自然酵母・オーガニック栽培の素朴な味わいが高評価を得ています。

URL:https://www.domaine-vinceline.fr

最寄りバス停:バス62番 Saquier

予約:通常は要予約

Via Julia Augusta(ヴィア・ユリア=オーガスタ) 

ローマ時代の街道に由来する名を持つ、歴史好きにはたまらないドメイン。

ワインの味わいもクラシックで、どこか時を巻き戻したような落ち着きを感じるとの評価を得ています。

こちらはオープンデー対象外で、見学や試飲はできず。

URL:https://www.viajuliaaugusta.com

最寄りバス停:バス62番 Saint-Pancrace

予約:通常は要予約

Domaine Saint Jean(ドメーヌ・サン・ジャン)  

2018年に誕生した比較的新しいドメイン。ニース出身の夫妻が情熱を注ぎ、伝統への敬意を忘れずに、新しいエネルギーを吹き込んでいます。ベレの未来を担う存在として今後注目したい一軒です。

URL:https://www.domainedesaintjean.fr

最寄りバス停:バス62番 Saint-Roman de Bellet

予約:通常は要予約

ベレ地区ワイナリー巡りの注意点

今回、週末2日かけて公共交通機関(市街地までトラム、市街地からベレ地区・ワイナリー間はバス)で合計6件のワイナリーを訪問しましたが、バスは1時間に1本間隔、路線によっては日曜運休、またほとんどのワイナリーはバス停から離れたところにあるため、相当歩きました。ワイナリー間の道路には歩道と車道の境界線はあるものの、縁石がなく間隔も狭いので、車が通る時は十分な注意が必要です。

また、私のように公共交通機関を使ってワイナリーに来ているお客さんはあまりおらず、ほとんどの方は車で来ていました。

もしワイナリーを巡る場合、春から夏にかけてはシャトルバスが運行するようなので、このバスが走っている期間に訪問するか、車や自転車をレンタルすることをお勧めします。

最後に

ベレ地区のワインは日本はもちろん、コートダジュール地区内のワインショップなどでもほとんど見かけることのない貴重なワインです。ワイナリー巡りはなかなか大変でしたが、だからこそ、このオープンデーで様々なワインを試すことができてよかったです。ちなみに2本だけお買い上げ。

ワインの価格帯はロゼが20€代〜、白や赤は30€代〜(いずれもまとめて購入した場合の値引き後)とフランス現地で買えるワインにしては割高で、安定した収入のない身には贅沢に感じましたが、機械が入りようがない急な段々畑で、今回お会いした生産者による農作業の大変さを想像すると、妥当な値段だと思いました。

おまけ ニースの市街地の広告はアルザスワイン。

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