Last Updated on 2026年2月6日
フランス語の会話力を鍛えるため、今年に入ってニースにあるアリアンス・フランセーズに通い始めました。週に2回、2時間の授業はなかなかのボリュームですが、内容が面白く、毎回あっという間に時間が過ぎていきます。
また、授業だけでなく、地元の人が集まる会話カフェや、コートダジュール出身・在住の友人たちとのおしゃべりの中でも、街の歴史や地中海沿岸の文化、地形にまつわる小話が自然と集まってきました。教室で学ぶ知識と、日常の中で聞く“地元の感覚”が重なっていくのがとても楽しく、街の景色が少しずつ違って見えてきます。
そんな中で集まった、ここコートダジュールの地元ネタをいくつか紹介したいと思います。

Contents
ニースも雨は降るの?
ニースは「一年中晴れている海の街」というイメージがありますが、もちろん雨も降ります。 雨が降るときは短時間で一気に強く降るのが特徴です。雨が降ると天気予報では結構頻繁に警報(vigilance orange)が発令されます。
というのもこの地域はアルプスの支脈に近く、秋から冬にかけて地中海からの湿った空気がぶつかることで集中豪雨が起こりやすいようです。
特に2015年にはコートダジュール一帯で豪雨が発生し、浸水や冠水、停電、そして死者も出る深刻な被害となりました。この災害をきっかけに、国の気象機関であるメテオフランス(Météo France)は警報システム(Vigilance)の運用をさらに改善し、アルプ・マリティム県(Alpes‑Maritimes)も住民への警報伝達や避難体制の強化を進めたそうです。

ニースにも「自由の女神」像?
プロムナード・デ・ザングレ(Promenade des Anglais、「イギリス人の遊歩道」という意味)を旧市街方面(東部)へ歩くと、通りの名前がケ・デ・ゼエタズュニ(Quai des États-Unis,)Googlemapは日本語では「エタユニ通り」)に変わります。
そしてその一角に、ひっそりと小さな自由の女神像が立っています。

これはニューヨークの自由の女神像を制作したフランス人彫刻家、バルタール(Bartholdi)によるオリジナルの小型レプリカのひとつ。19〜20世紀初頭にニースへ多くのアメリカ人が滞在していた歴史を象徴する存在です。 静かに海を見つめながら街の記憶を伝えているような佇まいです。
ニース西部の地区名は「カリフォルニア」
また、プロムナード・デ・ザングレを空港方面(西部)へ進むと、「カリフォルニ(Californie)」という地区に入ります。
19世紀後半〜20世紀初頭のベル・エポック期、ニースの都市開発が進む中で、当時ヨーロッパで人気だったカリフォルニアの太陽や豊かさのイメージが地名として採用されました。
かつてこの一帯には小さなヴィラやオリーブ畑、カリフォルニア競馬場、そしてカリフォルニア飛行場といった施設があり、郊外として発展していた時代の雰囲気がそのまま名前に残っているようです。
明るい日差しにヤシの木、広い空。街並みの直線的な配置もあいまって、確かにどこかアメリカ西海岸の雰囲気を思わせます。

余談ですが、コートダジュール空港はフランス屈指のプライベートジェットのハブ空港です。
ここはニースの他にもモナコやカンヌ、サントロペといったフレンチリヴィエラを構成する高級リゾート地の主要アクセス地で、複数のヘリ会社やプライベートジェット会社が拠点を置き、著名人やF1関係者、富裕層が利用しています。空港は専用ターミナルやヘリポートが整備され、夏のハイシーズンにはヨーロッパ中からプライベート機が集まっています。
地中海が青く澄んでいるのはなぜ?

地中海が驚くほど青く澄んで見えるのには、いくつかの理由があります。
まず、ニースの海岸は砂ではなく丸い小石(galets)でできているため、波が打ち寄せても細かな砂が舞い上がらず、あまり水が濁りません。足元で石が転がる音が響くあの独特の浜辺は、海の透明度を支える大切な要素でもあります。
もうひとつの理由は、地中海そのものの性質にあります。地中海は栄養塩が非常に少ない「超貧栄養海域」と呼ばれる海で、プランクトンの量が大洋に比べて圧倒的に少ないようです。プランクトンが少ないということは、水中に光を遮るものが少ないということ。太陽の光が深くまで届き、青い波長が強く反射されることで、鮮やかなコバルトブルーが生まれます。
寝転ぶには工夫が必要ですが、その分、水の透明度や海の色を存分に楽しむことができます。
地中海でも津波は起こる?
私が今住んでいるアパートは海に面しています。窓から広がるオーシャンブルーに一目ぼれして物件の契約を決意したものの、もし津波が来たらどうなるだろう…と気になりました。
しかしコートダジュール沿岸で津波が発生する可能性は非常に低いようです。主な理由としては、ニースが地中海の内湾に位置しているという地形的なものです。太平洋や大西洋のような巨大な海溝がなく、プレート境界で起こる大規模地震がほとんど発生しません。また、海底の急激な地滑りもまれで、海の深さや地形そのものが津波を生じにくい構造になっています。
もちろん、地中海全体で見れば歴史的に津波が起きた例はありますが、ニース周辺は地形的にリスクが低く、専門家の評価でも発生確率は極めて小さいとされています。

MerとOcéanの違い
フランス語の授業では、こんな小話を教わりました。
日本語では「地中海」をひとつの大きな「海」として捉えがちです。ある日、私が地中海を「Océan」といったら、フランス語では地中海はmer(海)であり、océan(大洋)とは呼ばないと指摘されました。
フランス語では、太平洋や大西洋のような広大で深い水域を océan と呼び、地中海のように陸に囲まれた比較的閉じた水域は mer と区別するとのこと。
フランス人の地理感覚や海のイメージの差を感じられて面白い発見でした。

Côte d’AzurとFrench Rivieraの違い(重要)
最後にもうひとつ、よく混同されている表現のご紹介を。
ニース周辺地域を指す言葉としてCôte d’Azur(コートダジュール)とFrench Riviera(フレンチ・リビエラ)がありますが、このふたつは似ているようで、実は範囲や由来が異なります。
Côte d’Azur(コートダジュール)
フランス側の海岸線のみを指すフランス語の固有名詞で、フランスの行政区画である地域圏(プロヴァンス=アルプ=コートダジュール)の名称にも使われています。
範囲はマントン(イタリア国境)からモナコ、ニース、カンヌを経てサン=トロペ、またはトゥーロン付近を指しますが、諸説あります。
名称は“Azure Coast(紺碧海岸)” の意味 で、1887年にブルゴーニュ地方Côte-d’Or(コートドール、黄金の海岸という意味)のディジョン出身の作家、 Stéphen Liégeard によって命名されました。
French Riviera(フレンチリビエラ)
Riviera はイタリア語で「海岸」という意味ですが、特に英語圏で使われる広い概念です。
範囲はイタリアのリグーリア海岸からフランス側までを含むとされており、明確な定義は存在しないようです。ただし観光の文脈では、 Côte d’Azur と同義で使われることが非常に多いです。
名称は19世紀にイギリス人が冬の保養地として訪れた際に 「イタリアのリビエラに似たフランスの海岸」という文脈でFrench Riviera と呼び始めたのが起源です。

