Last Updated on 2025年12月24日
海は冷たく、雰囲気は温かく。
12月7日(日)、ニース近郊にあるカーニュ・シュル・メールの海沿い(クロ・デ・カーニュ)で、バン・ド・ノエル(Bain de Noël)が開催されました。

ここでの開催が25回目を迎えるというこのイベントは南仏の年末恒例行事としてすっかり定着し、今年も多くの参加者、見学者が集結。
このイベントのことは以前から街の広告で見かけていたので、当日は現場の様子を少し離れた場所で見てきました。
港で繰り広げられていた光景は、遠くから眺めていても十分に迫力と温かさが伝わるものでした。
踊って泳ぐ、水着のサンタさんたちのクリスマス前の準備体操(?)
イベント開始は午前11時。開始の合図とともに、港周辺にABBAのVoulez-Vousが大音量で響き渡り、普段は静かな冬のクロ・デ・カーニュが一瞬にして夏のクラブのような雰囲気に包まれました。
サンタ帽にトナカイのカチューシャ、クリスマス柄のTシャツ……。
そんな参加者たちが次々と服を脱ぎはじめ、気がつけば水着、あるいは半裸のサンタさんがリズムに合わせ、楽しむことが正義とでも言わんばかりにて踊っています。

見慣れない光景に私は思わず吹き出してしまいましたが、どうやらこれは泳ぐ前のウォームアップらしい。
報道によると参加登録者は5歳から80歳まで、年齢の幅は地中海の寄せ波のように広いのに、リズムに乗る姿は驚くほど一体感があります。
そして、ついに入水の瞬間
気温12度、水温17度。南仏では「そこまで冷たくない」と言われる数字ですが、やはり見ているだけでこちらは思わずひっゃと背筋が縮こまるような光景です。
踊り始めから15分ほどが経ったころ、音楽がひときわ盛り上がり、DJの誘導でサンタさんたちが次々と海へダイブ。

カモメたちが空を舞う下、「ウェーイ」という歓声があちこちから上がり、赤い帽子と水しぶきが冬の海に散っていきます。
華やかでにぎやかな光景ではあるものの、見慣れない私にとってはどこか現実感が薄く、ふと頭をよぎったのは映画『タイタニック』の沈没直後、冷たい海を溺れる乗客たち……。
もちろん、彼らは完全に楽しんでいるのですが、寒中の海に人々が次々と入っていく様子には、どうしてもそのイメージが重なってしまいました。
泳ぐサンタ
水着のサンタさんたちはたちはその後も約30分ほど、波と戯れながら泳いだり、笑い合ったり、ポーズを決めたりと、各々が自分なりのノエルを海で楽しんでいるようでした。
寒さよりも、音楽と笑い声の温度が勝っている。冬nの南仏らしい?一幕でした。

地中海沿岸各地で行われる冬の風物詩
この冬の海水浴はクロ・デ・カーニュだけでなく、ニースやアンティーブ、モナコ、トゥーロンなど、コート・ダジュールの多くの都市で同様のバン・ド・ノエルが開催されているようです。
地元の新聞によると、2024年には
- Cagnes-sur-Mer:670人が参加(過去最多)
- Villefranche-sur-Mer:仮装参加者多数、ホットチョコレートのふるまい
- Sète:7回目の開催、地元と観光客が多数参加 など、地中海沿岸の各地での盛り上がりが伝えられています。
Bains de Noël 2025の開催地 (FRANCE3より)https://france3-regions.franceinfo.fr/provence-alpes-cote-d-azur/alpes-maritimes/antibes/carte-ou-et-quand-profiter-des-bains-de-noel-et-du-nouvel-an-incontournables-dans-le-var-et-les-alpes-maritimes-3262286.html)https://www.google.com/maps/d/viewer?mid=1GySFbJQxVPUFX_aApFQ3ff2OIUmS5v8&usp=sharing
寒稽古ともまた異なる、 冷たい海と温かい雰囲気のバン・ド・ノエル
バン・ド・ノエルは、いわゆる「寒稽古」や精神修行とはまったく異なる存在です。
冷たい海に入るとはいえ、雰囲気はどこか南仏らしいのびやかさに満ちています。参加者は修行僧ではなく、年末の地中海でちょっとした思い出づくりを楽しむ人たち。港のまわりにはカフェやマルシェが並び、イベントの後にはホットドリンク片手に笑いあう姿があちこちで見られます。冬の海よりも、そこに集う人々の温かさのほうが勝っている。そんな空気がこの行事の魅力です。

歴史的にも、バン・ド・ノエルは伝統行事の一つとして位置づけられています。ニースでは1944年の解放以降は毎年欠かせない催しとなり、ルーツを辿れば18世紀、スコットランド人の作家が冬でも海水浴を楽しんだことが記録に残っているそうです。

もっと遡ると、もともと古代の冷水療法の考え方に基づき、徐々に市民のあいだで広がっていき、今ではコートダジュールの冬を象徴する風物詩として定着しているようです。
カーニュのこのイベントは参加費無料、住民でも観光客でも誰でも気軽に参加できる開かれたイベント。歴史とユーモアと開放感が混ざりあった、コートダジュールならではのクリスマスの様子を垣間見た気がします。
