【留学通信】リサーチ方法を学ぶ― 実務×研究×倫理の横断モデルに苦しむ ―

Last Updated on 2025年11月7日

今週からResearch Project Methodologiesという新しい授業が始まりました。

この科目はフランス政府との協働枠組みの中で開講されたもので、担当教授は地域の大学で研究ラボラトリーを率いる研究者。授業の冒頭で「このコースは、フランス政府との連携を通じて設計され、今後、プロジェクトマネージメントやコンサルティング活動に直接役立つ内容となっている」とのこと。

教授は初回の授業のはじめに近年のAI活用をめぐる実例として、ある国の政府向けに提出されたコンサルティング報告書の事例を紹介しました。その報告書ではAIが無断で利用され、文献の誤引用や存在しない参考文献が含まれていたため、最終的に修正と返金が求められたといいます。教授はこのケースを引き合いに、AIを使うこと自体は問題ではないものの、使用の目的や方法を明示し、成果物の信頼性を自ら検証できることが必要だと強調していました。

インテンシブな授業設計

授業は全12時間、1単位という短期間ながら極めて濃密な内容です。学生はグループに分かれ、授業内で学んだ研究手法をその場で適用する課題に取り組みます。今日なんて「最低20枚のスライドを作成し、翌日に20分間のプレゼンテーションを行うように」との指示が出ました。生徒の一部は無謀な作業なんてやる意味がないと抗議していましが、課題は課題。今夜は家に帰れそうにありません。

これまでの課題や発表準備と重なり、時間的にも精神的にも余裕はありません。

しかしこの過密なスケジュールは単なる負荷ではなく、MBA教育の核心である実践的知の統合を体験する場なのだと思います。短い時間の中でチームとして意見をまとめ、限られた情報を分析し、根拠を示しながら提案を構築する。その一連のプロセス自体が、現実のビジネス環境で求められる能力と直結しているのです。教授は「研究的アプローチを持つことが、複雑な課題に対する唯一の持続的な解決策である」と語っていましたが、その言葉の重みを肌で感じる授業となっています。

学びを実践に

MBAの学びというと経営戦略やファイナンスなどの定型的な科目を思い浮かべがちですが、この授業では問題をいかに定義し、どのような枠組みを使って問題を特定し、解決案をアウトプットしていくかという研究の手法をアカデミックな視点で学んでいきます。

教授が紹介した“systems thinking(システム思考)”という考え方は、組織を単なる構造体としてではなく、相互に関連し影響し合う動的なシステムとして捉えるものです。これはAIの授業でも触れられましたが、この視点をもつことで、組織変革や社会的課題の解決をより包括的に設計できるとされます。そして授業中や宿題として、学生たちはこの理論を用いて実際のケースを分析し、データの因果関係をマッピングしながら問題の根本構造を可視化していきます。

プレッシャーに耐える

昨日の授業の終わりに課題が与えられました。それは「今後の個別プロジェクトで活用できる学術的に信頼度の高い文献を時間内に最低10個抽出し、引用リスト(citation)を作成せよ」というものでした。

一見単純な課題のように思われますが、実際は極めて高い要求水準です。短時間で参照に値するハイレベルの文献を探し出し、内容を理解し、信頼性を見極めた上で、適切な引用形式にまとめる。そのすべてを行うには相当の経験と集中力が必要です。私は検索と整理の両方に行き詰まり、時間内に課題を仕上げることができませんでした。画面上にある未完成の引用リストを見つめながら、冷や汗とともに、もともとあってないような自尊心が崩れていくのを感じたのでした。

 私だけでなく、みんなも辛そう

現在、首が回らないほど追い込まれていますが、この記事は、プレゼン準備に行き詰まり、やるせない気持ちを吐き出したくてお昼休みにコーヒールームで殴り書きしています。限られた時間の中で知的成果を出せず、研究者としても?実務家としても??中途半端な存在にしか思えません。自分は何ひとつ価値を生み出せていないのではないか。自己否定的な思いが頭を離れません。

でも、こうやって苦しむ中にこそ学びがあるのだと思います。私だけでなく、みんな辛そう。AIでやデータベースを味方にしつつ、自分で考える力を鍛えること。それがこの授業が私たちに突きつけている最大の課題だと感じます。

この授業も成果を競う授業ではなく、あくまで思考の過程そのものを問い直し、学ぶことの意味を再定義する試みです。ただ、今のところは折れかけた自信を抱えながらも、みんなで机に向かい、真面目に取り組んでいくしかありません。