フランスの国勢調査を受けた話

Last Updated on 2026年1月21日

12月のある冬の夜のこと。

​玄関に封筒が挟まれており、そこに大きく書かれたRECENSEMENT DE LA POPULATION Courrier important d’information という文字が飛び込んできました。

住民調査? 

しまった。住民登録をしていないし、住民税だって払っていない…!

その瞬間、一気にそわそわしました。

しかし文面を読み進めるうちに、これは住民登録の催促でも、税金の督促でもなく、日本でいうところの国勢調査に当たるものだと分かりました。

今日はこの国勢調査の回答をしました。せっかくなので、思ったことを残したいと思います。


12月、アパートの扉に差し込まれた一通の封筒

その封筒は役場名義のものでした。

アパート入口にある郵便受けを通さず、誰かがわざわざ部屋まで来て、不在を確認し、扉に差し込んで帰ったようです。
 
封筒には、再度訪問する旨が、あらかじめ印刷されたメモ書きとして添えられていました。
通知の中身は国勢調査の調査協力依頼で、これは義務だから必ず答えるようにとの釘差しが添えられていました。
 
正直に言えば、少し意外でした。というのも、私が受けるべき郵送物の多くは、宛先不明として送り返されることが珍しくないからです。

銀行からの重要書類や郵便物がきちんと届かない一方で、行政関係の書類だけは、確実に届く。そんな事実にわずかながら皮肉めいた感情を抱かずにはいられませんでした。

 1月、またも扉に封筒が。今度はセロハンテープで厳重に固定

年が明け、1月中旬。

再び、玄関の扉に封筒が。今度は、セロハンテープで扉のドアノブにしっかり張り付いていました。
 
開封して中身を確認したところそこにはインターネットで回答するためのアクセスコードやパスワードが記載された依頼書が入っていました。不在でも、確実に目に入る場所に届ける。その徹底ぶりからは、この調査が義務であることが静かに伝わってきます。

フランスの国勢調査は毎年実施

フランスの国勢調査はINSEE(国立統計経済研究所)が実施しています。日本のように5年に1度の全国一斉調査ではなく、毎年行われる抽出調査です。

具体的には

  • 人口1万人以上の自治体では約8%の世帯が対象
  • 1万人未満の自治体では、5年に一度、全住民が対象

といったルールがあるようです。8%の確率で当たるとと思うとそれほど大したことはないかもしれませんが、同年代のフランス人の友人にこの話をしところ、今まで1回しか受けたことがないとのことでした。

回答期間が短い

回答期間は1月15日から20日まで。先ほど慌てて回答しましたが、わずか数日間という短さに少し驚きました。
 
また、依頼書には、国勢調査は、acte civique(市民としての行為)でありobligatoire(義務)であると書かれています。回答状況を監視されているのか、期限内にオンラインでの回答がなければ、後日職員が訪問し、紙での回答が求められることになるとも書かれています。
 
プライバシーへの意識が高いと言われるフランスですが、少なくともこの場面では、「個人情報を守る」よりも「社会を正確に把握する」ことが前面に出ているように感じられました。 

質問項目が映し出す、国が見ているポイント

調査票は回答者の属性(名前、性別、国籍、生年月日等)以外に、大きく3つに分かれていました。

(1)住居についての質問(住所、部屋数、設備内容、住環境など)
(2)同居人についての質問(居住者数、同居者氏名、年齢、性別、同居者の他の住居の有無など)
(3)個人についての質問(両親の出生地、婚姻等の状況、就業状況、健康状態など)
 
(1)住居環境について答える意味がよくわからないながら、それよりも(2)の同居人についての質問とその意図が気になりました。
というのも、冒頭でも書いた通り、役場に転入届のようなものを出していないことに今更ながら気が付いたからです。

よくよく調べたところ、フランスには全国一元の住民登録制度のような仕組みはないので、国や自治体は、日本のように常に全人口を把握しているわけではありません。正確な人口が分からない、この調査が人口把握の根拠、また、各自治体の福祉や医療といった各種行政サービスへの予算配分や、自治体が国から補助金等をもらうための根拠資料となるようです。
 
(2)質問の内容は「どのような人と、どのような関係で暮らしているか」を問う構成でした。
フランスには「世帯」や「戸籍」といった家族単位をまとめる概念はありません。国が調査で見ているのは、あくまでその家(logement)に誰が住んでいるかです。家族というのは制度ではなく、関係性でとらえられているのだと感じました。

(3)の個人についての質問では、入国のタイミング、また任意ながら両親の出生地などが問われました。この調査は外国人でも調査の対象になりますが、日本のように3カ月以上在住といった括りはなく、滞在者かどうかよりも、「ここで生活しているか」が基準となっているようです。学歴や職業も求められ、国はこの調査を通してフランスに住む移民の状況等を確認する意図も大いにありそうに感じました。
 
それにしても、郵便物が迷子になりますが、国勢調査のようなものは、職員がアパートに入って部屋までやって来て、確実に届けていく。その徹底ぶりに少し感心しつつ、また少しフランスのお国事情を垣間見た気がします。 

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