Last Updated on 2025年7月29日
フランスが好きな方。
フランスに行きたいけど、今すぐに行けない方へ。
現在開催中の大阪・関西万博では、フランス館がまさに愛の賛歌を体現した空間になっています。
本記事では、展示内容から混雑状況まで、現地訪問レポートをお届けします。

私が訪問した日はあいにく新幹線も止まるような大雨となりました。
しかし前日から夜行バスでの移動だったので、早朝には大阪に到着できました。
Contents
大阪・関西万博2025について
多くの方はすでにご存じかもしれませんが、この大阪・関西万博2025は、2005年に愛知で開催された「愛・地球博」に続き、日本では20年ぶりの開催となる「国際博覧会」です。

1970年に日本で初めて開催された大阪万博(EXPO’70)では、日本の高度経済成長を象徴するイベントとなりました。
今回の万博も2020年東京オリンピック・パラリンピックに続き、「いのち輝く未来社会のデザイン(Designing Future Society for Our Lives)」というテーマの下、日本の成長を持続させる起爆剤となることが期待されています。
また、日本の国家戦略「Society5.0」の実現や国連の「持続可能な開発目標(SDGs)」達成への貢献を目指しています。
Society5.0とは
我が国が目指すべき未来社会の姿であり、(中略)情報社会(Society 4.0)に続く新たな社会です。(中略)我が国が目指すべきSociety 5.0の未来社会像を「持続可能性と強靭性を備え、国民の安全と安心を確保するとともに、一人ひとりが多様な幸せ(well-being)を実現できる社会」と表現しています。
内閣府公式ウェブサイト
持続可能な開発目標(SDGs)とは
2015年9月の国連サミットで加盟国の全会一致で採択された「持続可能な開発のための2030アジェンダ」に記載された,2030年までに持続可能でよりよい世界を目指す国際目標です。17のゴール・169のターゲットから構成され,地球上の「誰一人取り残さない(leave no one behind)」ことを誓っています。SDGsは発展途上国のみならず,先進国自身が取り組むユニバーサル(普遍的)なものであり,日本としても積極的に取り組んでいます。
外務省公式ウェブサイト
開催期間
2025年4月13日(日) から10月13日(日)の約半年間です。
会場
大阪府大阪市にある人工島の夢洲(ゆめしま)です。
特徴
「未来社会のデザイン」というコンセプトに基づき、環境にやさしい新たな試みが実施されています。このため、来場にはいくつかの注意が必要です。
会場内はキャッシュレス決済
全面的なキャッシュレス決済が導入されています。
入場はもちろん、会場内の買物、飲食ではキャッシュレス決済のみで、現金の使用はできません。
会場までのアクセスも要事前確認
万博会場への自家用車等の乗入れはできません。
Osaka Metro中央線を利用するか、府内の主要駅から発着するシャトルバスの利用(有料)をお勧めします。
会場は東西2か所のゲートがありますが、メトロから近いのは東ゲートです。
シャトルバスは事前予約が必要です。
会場はフロアマップが少なく、紙の地図は配られない
CO2排出量削減のため、会場での紙類の配布は一切ありません。地図も自分のデバイスから確認する必要があります。
一方で会場内には全体を俯瞰できるフロアマップの掲示場所が少ないです。
電波が悪かったりと意外と電力を消耗するので、地図を事前にダウンロードするか、印刷して持参することをお勧めします。
前置きが長くなってしまいました。それではフランスパビリオンに行ってみましょう!
フランスパビリオンの概要
位置
万博会場は東西2つのゲートがありますが、フランスパビリオンはメインエントランスでもある東ゲート側のエンパワーリングゾーンにあります。
ホストの日本館からも近く、人が多く行き交うよいところに立地しています。

西側ゲートから直行した私は少し迷いました。
コンセプトは「愛」
パビリオンのテーマは「愛の賛歌」です。
日本の「赤い糸で結ばれる愛」の伝説がいたるところで形になっているので、宝を見つける気持ちで探してみましょう。
ちなみに「愛の賛歌」といえばフランスの名歌手、エディット・ピアフの代表曲をイメージする方もいらっしゃるかと思いますが、会場で耳にすることはありませんでした。
公式パートナー
LVMHやAXA、ニナファームといった各分野でフランスを代表する大企業のほか、今回はワイン産地であるアルザス地方が公式パートナーとなっています。
パビリオンの外観
建物のファサード(正面)はシャンパンゴールド色のメタリックなモチーフが印象的です。
このファサードは会場のメインエントランスを向いています。
外から見ると近未来的な印象ですが、これらの資材は万博終了後は全て再利用できる素材で作られているようです。
また、正面からは見えにくいですが、屋根は緑化されているほか、正面の反対側は緑豊かな庭園となっています。
パビリオンに入るとお庭も見学できます。
パビリオン見学——日本とフランス、ふたつの文化が赤い糸に結ばれた空間
このパビリオンは、もちろんフランス全体を象徴しているものではないにせよ、最新のテクノロジーとアートを融合し、フランスの底力、また美に対する深い思い入れを見て取ることができました。
展示では、フランスと日本が赤い糸で結ばれていることを意識した作品にたくさん出合うことができました。

それでは見ていきましょう。
見どころ①スタジオジブリ「もののけ姫」の世界観×ノートルダム大聖堂の火災を逃れたキマイラ像

青いパネルが続くエントランスを進むと、最初の部屋に入ります。
ここにはスタジオジブリの「もののけ姫」の一場面と、ノートルダム大聖堂にたたずむガーゴイル像が待ち受けています。
このもののけ姫の絵はフランス・アキテーヌ地方オービュッソンという村の伝統工芸手法により織られたタペストリーです。
陰影と苔の入り具合が絶妙で、また日本の作品に新しい息吹を吹き込んでくれたことにうれしく感じました。オービュッソンは初めて聞きましたが、こういう小さな発見ができるのが、万博のよいところに感じました。
ちなみに、前回日本で行われた「愛・地球博」会場となった愛知にある県立美術館では、特別展示としてオービュッソンの『千と千尋の神隠し』のタピスリーが8月7日まで展示されているようです(詳しくは愛知県立美術館公式ウェブサイトへ)。
このタピスリーの前にたたずんでいる獣のようなオブジェは、パリのノートルダム大聖堂の屋根を飾るキマイラという雨どいと魔よけのような役割を持った彫刻です。大聖堂にはいろんな表情のキマイラ像が全方位に並んでおり、それぞれがパリを見下ろしています。
この像は2019年の火災で難を逃れたようです。
見どころ②メゾンの意匠を凝らした「メイド・イン・フランス」
ルイ・ヴィトンのモノグラム
次の部屋に入ると景色は一変し、ルイ・ヴィトンを代表するモノグラムをしらったトランクが空間を占めています。

私はモノグラム対して勝手に富の象徴といったネガティブなイメージしか持っていなかったのですが、この空間は芸術的だと思いました。
というのもこのモノグラムは19世紀後半、日本の家紋にインスピレーションを受けているという誕生秘話を知ったから。

クリスチャン・ディオールの白の世界
別の部屋に入ると、クリスチャン・ディオールのオートクチュール作品「バー」のスーツが並んでいます。

青、白、赤のトリコロールの3着は、1949年にクリスチャン・ディオールがデザインし、2024年パリオリンピックの際に複製されたもの。
時代が変わっても、その美しさが色あせることはないようです。
トリコロールに目がない私はこの光景にうっとり。
他にも白を基調としたさまざまなドレスが展示されていました。

見どころ③アルザスが手掛ける「ガストロノミーというアート」
LMVHの意匠のあとは、ガストロノミーの空間が待ち受けています。
フランスはさまざまな側面を持つ国ですが、多くの方が思い浮かぶのが「美食」ではないでしょうか。
実際、フランスのガストロノミーは日本の和食や酒造りと同様、ユネスコ無形文化遺産に登録されています。
そんな食文化を支えているのがワインです。

今回、ワイン産地のひとつであるアルザス地方でぶどうが育ち、そのぶどうがワインとなって私たちの食卓に届くまでの過程が美しい映像となって紹介されています。

そのひとつひとつの手作業が「サヴォワー・フェール」、つまり手作りの芸術であることを実感できます。
見どころ④奇跡の庭園の千寿オリーブの樹
パビリオンの最後の見どころが奇跡の庭園という名の屋外ブースです。

見どころは「永遠の若さの樹 – ゼウス」と呼ばれるオリーブの木。
外に出た瞬間に目に入る幹の太いこの木は、アヌシーに本社を置くニナファーム社が管理する樹齢2300年の古木です。
アヌシーといえばアヌシー湖とモンブランという自然豊かな風景を想像しますが、この会社をはじめ、最先端のテクノロジー企業が集まる地域でもあるそうです。
この会社が万博の総合テーマ「いのち輝く未来社会のデザイン」フランスパビリオンのテーマ「愛の賛歌」に深く呼応し、この会社が開発中の健康長寿のサプリメントの世界観を表しているようです。
庭園に来るまで涼しい室内でファッションやガストロノミーといった伝統とテクノロジーを融合した芸術的な作品を目にしていたのですが、ここにきて今度は圧巻の自然の美に直面。
改めてフランスの力を感じました。
番外編 館内のビストロでアルザスワインの試飲ができる
今回、私は試せませんでしたが、館内にあるビストロではアルザスワインの試飲ができます。
ワインリストは15日ごとに代わるようです。
ワインの銘柄は当日ウェブサイトで確認ができるので、試飲したい方はぜひチェックしてみてください。
フランスメディアの反応は?
5月28日付のFranceinfo Culture と AFP によれば、5月23日時点でフランス館の来場者数が100万人を突破、初日から約44日間で到達し、1日平均約25,000人が訪れていることを強調しています。
また、国際的な注目を集めているほか、来場者の約4分の1がフランス館を訪問しており、来場者300万人の目標を前倒しで達成する勢いであることが報じられています。
万博に行きたいけど行けない…そんな方はこちらをチェック
フランスパビリオンの公式ウェブサイトから、360度の没入型映像が無料で楽しめます。
まるでフランスパビリオンを訪れているかのような感覚を楽しめますので、ぜひのぞいてみてください。

最後に フランスパビリオンへの入館について
①入館に予約は必要?
入場に事前予約は必要はなく、並び順となります。
②待ち時間はどれくらい?
待ち時間は訪問時期によるようです。
私は平日午前中、おまけに会場全体が水たまりとかした大雨の日の訪問でした。
空いているだろうとたかを括っていたのが、見事に外れました。
館前には長蛇の列ができており、40分程度待ちました。
長寿の列といっても立ち止まることは少なく、少しずつ前へ前へ進みました。

朝イチの時間帯を予約したのが悪かったのか、荷物検査でも1時間以上待ちました。
③滞在時間はどれくらい?
ブースの数はそれほど多くなく、映像系、読み物系の展示もそれほどないので、回転は速い方だと思います。
さっと鑑賞する程度であれば30分程度で回ることができでしょう。
私のようにじっくり見たり、写真を撮りたい場合、1時間はかかると思います。
④雨の日はどうする?
フランスパビリオンのブースのひとつである庭園は屋外にあるので、雨が降った時のための備えをしておくと安全です。
私は今回のように移動の多い日は運動着を着用し、通気性のよいランニングシューズを履いていますので、衣服はすぐに乾きました。
その上で折り畳み傘でしのぎましたが、中にはレインコートを着用し、足元にはビニール袋を履いている人もいました。
雨の日対策と暑さ対策はしっかりすることを強くお勧めします。
⑤どうして「愛」がテーマなの?
公式サイトにはこのように書かれています。
フランスパビリオンのテーマは「愛の讃歌」。
互いの小指が見えない魔法の糸で結ばれているという「赤い糸の伝説」。この赤い糸を通じて、「自分への愛」、「他者への愛」、「自然への愛」といった様々な「愛」に導かれる新しい未来のビジョンを提案します。
大阪・関西万博2025 フランスパビリオン
これは科学や技術が進歩する時代だからこそ、私たちが見落としがちな「手作りの意匠」や「感性」、そして「つながり」を改めて見直す必要があるというメッセージが込められているのかもしれません。
愛は詩人や芸術家や発明家、革命家にインスピレーションを与える大きなもの。パビリオンでは単なる装飾的なものはなく、「文化の違いや意見の相違を超えて人々を結びつける力」としての愛が表現されているのだと思います。