Last Updated on 2026年1月13日
街が素顔を見せるとき
雪のパリは、写真で見る分にはこの上なく美しい街です。
白く縁られ屋根に、音を吸い込んだように静まり返る通り。
けれど眺める側から移動する側に回った瞬間、その美しさは別の顔を見せ始めました。
それは少しばかりの忍耐と判断力を求められる、なかなか手強い試練です。
新年早々、学校のプログラムの一環でパリに滞在することになりました。
今回は、その中でも雪の日のパリで起きた出来事について綴ろうと思います。
夜行列車がキャンセルに
私は授業前日に夜行列車でパリへ向かう予定でした。
ところが出発日の朝「運行休止」というタイトルのメールが届きます。
内容はシンプルで、車両不具合のため運休とのこと。

夜行列車は単なる移動ではなく、その夜の宿でもあります。
早く移動の代替手段と宿泊先の手配をしなければ!
そのとき私はその日の授業の予習をしていましたが、そこからは代替列車の手配と宿泊先探しに追われる時間と化しました。
結果として、当初は存在しなかったはずの到着地での一泊が発生し、予定外の夜を過ごすことになります。
幸い別の列車に空きがあり、パリ行きそのものが消える事態は免れましたが、出発時刻は授業と重なっています。
荷物を抱えて学校へ向かい、授業を途中で退席し、そのまま駅へ直行することに。
ところが、その列車もまた予定通りには動きませんでした。駅の表示版によると折り返しとなる電車雪の影響で鈍行し、出発は2時間遅れ。
ドアの開閉で冷たい隙間風が吹く構内で行き場のない時間を過ごすことに。パリのホテルに辿り着いたのは深夜でした。
雪の朝に見たパリの表情
パリに到着し、街へ出ると、幻想的な光景が広がっていました。

写真に収めるのは少し難しい、夜の雪に包まれたパリ。
長旅で疲れ切っていたはずなのに、白く静まった街並みはどこか非現実的で、思わず足を止めて見入ってしまいました。
その晩はあまり眠れないまま、翌日は相当余裕を持ってキャンパスへ向かいました。
メトロ構内は混雑していましたが、地上に出た瞬間、その印象は一変。

雪が積もる道路は驚くほど静かで、走っている車はほんのまばら。
バスはゆっくり動いてはいるものの、ダイヤはかなり乱れていたようです。
街全体が止まっているわけではないけれど、どこか、みんな急いでいない。
人も、街も、深呼吸をするように、ほんの少しペースを落としているように見えました。
後から届いたお知らせ
数日後、SNCFから一通のメールが届きました。
振替先の電車の遅延に対する補償として、次回の乗車で使える割引コードが付されていました。
また、夜行列車が通常どおり運行されていれば不要だった宿泊についても、手続きをすれば補償の対象になり得ることが分かりました。
自動的に対応されるものではなく、最終的にはSNCFがどう判断するかに委ねられるようですが、状況をきちんと説明すれば、話を聞いてもらえる余地はあるようです。
雪の日の移動で思ったこと
夜行列車がなくなり、昼間の便に切り替え、授業をひとつ諦め、変更後の電車でも遅延が起きる。
そうした状況の中で、どうすれば予定通りにできるかを考え続けても、気持ちは落ち着きません。
むしろ、この日は何を守り、何を手放すかを決めた方が、判断はずっと楽だと感じました。
フランスでの留学を通して、私が学んでいるのは、ビジネスや語学そのものよりも、こうした場面で立ち止まり、優先順位を組み替えて予定を変えていく行動力や柔軟性かもしれないと、最近つくづく感じます……。
特に語学力は、日本で勉強していた時の方がよく身についているのではないかとさえ思えてしまいます。
移動にトラブルはつきもの(フランスは特に…)
旅のトラブルはできれば避けたいものです。
特に移動に関しては時間も体力も奪われますし、気持ちまで落ち着かなくなります。
それでも、ときにそうした出来事が、街の別の表情を見せてくれることがあります。
雪の日のパリは不便で、寒く、何ひとつ思い通りにいきませんでした。
それでも、雪化粧を施したパリの風景には、やはり心を動かされてしまう。にくいやつです。

