Last Updated on 2026年3月11日
年が明けてから学校の必須科目の難易度が一層高くなり、遅れを感じるようになってきました。
頑張っても頑張っても、次々と課題が降ってくる。
ひとつ片づけたと思いきや、別の課題の締切が私の肩を叩く。そんな日々の中でブログのことが気になっていたものの(忙殺の日々の中でもネタは尽きません)、更新は途切れがちになってしまいました。
そんな中、3月上旬に息抜きがてらハイキングへ。
はじめは「宿題が…」と勉強のことが気がかりでしたが、結果的には体も心もよい気分転換になりました。
Contents
今回のコース
今回は目的地は Saint-Jannet(サン=ジャネ)という村にある Baou de Saint-Jeannet(バウ・ド・サン=ジャネ)。

この地方には”baou(バウ)”と呼ばれる白い石灰岩の岩山がいくつかあります。
その代表格がこの山と、隣の Baou de la Gaude(バウ・ド・ラ=ゴード)。

標高はそれぞれ Baou de Saint-Jeannet が 802m、Baou de la Gaude が 796m。
この日はBaou de Saint-Jeannet の頂上を踏み、さらに古い要塞のようなRuine du Castelet(通称「カステレの廃墟」)へ回って下山するルートを歩いてきました。

距離にしておよそ 11km、累積標高差およそ 552m。ハイキングというより、軽い登山です。
山のふもとで昼ごはんを確保。まずはここから。
自然を歩く日は、先に食を確保することが重要です。
というわけで事前に予約をし、ふもとにあるパン屋さんへ。
お店の中は地元の人が当たり前みたいに列を作っていました。観光地の行列とは違い、店の人とお客さん、またお客さん同士が仲良く話し込んでいます。生活のリズムの中に、こちらが少しだけ混ぜてもらうような感覚になります。事前に予約したはずなのに列に並ばされたのは、ご愛嬌ということにしよう…。
こちらで手に入れたのは、コートダジュール(ニース周辺)の名物 pan bagnat(パン・バニャ)。
サンドイッチにしてはかなり大きくずっしりとしている感じがしますが、登頂後のお楽しみ。
ふもとの茶色い家の集落を抜ける。
バウのふもとにある公共の駐車場に車を停めて、いざ出発。

歩き出してすぐ、ふもとの茶色い家がまとまって並ぶ集落に入ります。


私は勝手にいつ頃に、どんな人たちが、ここを生活圏として形づくったのだろうと考えてしまいます。
建物は古そうですが、地元出身の知人曰く、建築されたのは80年代とのこと。
単に私が聞き間違えただけかもしれません。事実かどうかは分かりませんが、この建物、私と同世代なのか……?
とはいえ、私も十分年を重ねたものです。
「本当に目的地にたどり着くのだろうか」
村を抜けて上り坂を上がっていきます。

しばらくすると、道はやがて整備された散歩道ではなく、山道となっていきます。
そして上に行くほど、人とすれ違う回数が減っていく。
足元は白い石灰岩の大きな岩がごろごろしていて、道はつねに途切れそうに見える。

ここからは、案内板や、石に描かれた赤と白のマーキングが頼りです。
「目印があるから大丈夫」と頭ではわかっているのに、ときどき不安になります。


本当に目的地にたどり着くのだろうか
その不安は、最近の自分の心境とよく似ているものでした。
頑張っても頑張っても、終わらない授業準備と課題。
「前に進んでいる」実感よりも、「いつまでたっても終わらない」という気持ちに押しつぶされそうなときがある。
でも、登山は正直なものです。
一歩進めば、必ず一歩分だけ標高が変わる。
見えないようで、ちゃんと近づいている。
そんなことを感じつつ、一歩一歩前進しました。
登頂。絶壁に立つ
頂上に着き、足元ばかり見ていた頭を上げたら、一気に視界が開けました。

曇っていたのに、コートダジュールの街並みと海が見渡せます。
学校やバスよりももっと高いところから。
頂上は絶壁になっていて、崖のおおきな岩と岩の間には隙間があり、そこから下界が見えます。
きっと日本の山なら立入り禁止になっているでしょう。
私は足元がすくみ、すぐに後ずさりました。
怖い。でも、美しい。
パン・バニャという名のサラダをほうばる。
絶壁をあとずさりしたら安心したのか、急にお腹がが空きました。
ひとつだけあるベンチが空いたので、そこに腰かけてパン屋で買ったパン・バニャでお昼ごはん。

食べ応えのある固めパンに、みずみずしいトマトとピーマン。固めのゆで卵と種付きオリーブに、アンチョビの塩気。
登頂前、登山の途中にパンバニャの話になり、同行の知人が言った「これはサラダ」という言葉が、食べながら何度も腑に落ちました。
ナイフとフォーク不要のサラダ・ニソワーズ(ニース風サラダ)です。
おまけに山の上で食べると、まるで身体の隅々に栄養が流れ込むようで、疲れ切ったはずの体の中に静かに元気が戻ってくるような感覚になりました。
余力をふり絞って寄り道する。
帰り道、登山の途中で遠くから見えていた Ruine du Castelet(カステレの廃墟)へ寄り道することに。

ぼんやり廃墟が見えますが、わかりますか?

私としては寄り道というより、大きな回り道です。
ここは標高約700mの崖の上に佇む、19世紀の地籍図(cadastre)にはChâteau du Castelletと表記された大きな遺構で、カーニュ川(La Cagne)谷を見下ろす位置にあります。
バウを降りて谷をひたすら歩き、谷の先へ進みます。


baouの乾いた白さとは生態系が異なるのか、こちらは全体的にうっすら苔むしていて、空気がしっとりしているのを感じました。
どこか日本の山のようで、私は勝手にジブリの世界を思い出しました。
そしてうっすらとした茂みの中を進むと、小さく見えた建物が……


大昔に人の手で積まれた石と、その後に育まれた自然。
ちょうど雲から光が差し込んでいたこともあり、まるでラピュタの城に来てしまったように感じました。
近づきすぎず、外側から眺めるだけでも十分に物語のある場所でした。

また下山。水の音が、やけにさわやかだった。
下りはスニーカーのひもをきつく縛り直し、カーニュ川に沿ってふもとを目指します。人の歩んだ軌跡に沿って、足元をすくわれないように注意しながら、ひたすら坂を下ります。
ところどころに水源(sources)があり、水が流れる音がしました。
(この間はひたすら歩くのに夢中で、写真が残っていません)
baouは 乾いた岩の世界だったけど、こちらは川が近いから潤っているのか。
「ここに流れているのは雪解け水だよ。雪が解けて水量が増えていくと、海の色もグラデーションになるんだよ」と地元出身の知人。
あの日、カーニュの谷を渡った水は、やがて地中海へと流れていく。
その水が海を澄ませているわけではないでしょう。
けれど、山から来た冷たい水もまた、春の青のどこかに溶けていると思うと、海の色が少しだけ近しく感じられるものです。
道中、アルピニスト(クライマー)向けに岩へ打たれた支点(杭のようなもの)を見かけました。
どうやらこの岩山はハイキングだけじゃなく、クライミングとしても知られているようです。
いろいろ試してみるのが好きな自分としては、近い将来、アルピニストとしてデビューするかもしれません。
その前に体を鍛えないと!

ハイキングのポイント
コートダジュールでリゾートとはまた別の体験をしてみたい方は、baouハイキングはおすすめです。気になった点をまとめます。
- アクセス: (公共交通機関)ニース北西部のGrand Arénas (交通ハブ)から出ているバス54番線で1時間半。
- 駐車:どうやら週末はお昼ごろには満車になりやすいようなので、可能なら午前の早めが安心。
- 足元:上部は岩が多く、上に行くほど道なき道となります。ランニングシューズでは足元が不安に感じました。登山用の滑りにくい靴がおすすめ。
- 目印:赤白マーキングや木製の案内板を追う。
- 断崖:頂上付近は足がすくむポイントも。ガードは皆無なので、一歩間違えると命を落とす危険も。無理に縁へ寄らないこと。
- 廃墟:立ち入り禁止の案内あり。外から眺めるだけでも十分インパクトあり。案内に従って安全第一で。
