【フランス生活】南仏でカフェオレボウルを巡る旅① ヴァロリス

Last Updated on 2025年12月29日

コートダジュールの海辺を歩くと、誰もがまず光のまぶしさや色彩の鮮やかさを語ります。しかし、この地域の魅力は海だけではありません。

ヴァロリス(Vallauris)。そして次に訪れるビオット(Biot)。

どちらもアンティーブに近く、暮らしの延長に器が息づく「陶器の町」として知られる小さな街です。

今回の旅の目的はひとつ。それは
小ぶりなカフェオレボウルを見つけること。

量産品ではなく、作り手のぬくもりが残るような一品。手に取った瞬間に「これだ」と思える、そんな器との出会いを求め、南仏の風「ミストラル」強く吹く年末にヴァロリスへ向かいました。

ヴァロリスが「陶器の町」といわれる理由

ヴァロリスは耐火性に優れた粘土質の土壌に恵まれ、中世後期になると、甕や土鍋などの実用陶器の生産地として発展しました。

16〜18世紀にはイタリア北部のリグーリア地方から来た陶工たちによって技術が洗練され、内側施釉やジャスぺ装飾など、独自の様式が確立されます。

その伝統を基盤に、19世紀にはマシエ家が造形と釉薬研究を深化させ、実用品から芸術陶器へと大きく舵を切り、名声を高めていきました。

戦後、1950年代にはピカソら芸術家が集い、伝統と前衛が融合した新たな陶芸文化が花開いていきました。

ピカソ国立美術館

この地の陶器の歴史を知る上でまず足を運びたいのが、旧市街地にあるピカソ国立美術館です。

会場は16世紀に修道院として建てられた旧城館に設けられた建物です。ここには戦後数年間、この地で作陶活動に精を出したパブロ・ピカソの作品をはじめ、現代作家の企画展などが行われています。

ピカソが残した「手仕事との縁」

映像資料の中で心に残ったのは、ピカソの才能そのものよりもピカソの「止まらない手」。
描いて、作って、試す。そのすべてが生の証でした。

ピカソがヴァロリスを選んだのは偶然ではありません。1946年、隣町ゴルフ=ジュアン滞在中に陶芸家夫妻スザンヌとジョルジュ・ラミエと出会い、翌年からマドゥーラ工房で制作を始めます。
彼が陶芸の世界へ踏み込む、その入口には町より先に人との縁がありました。

ヴァロリスのアーティストたちによる、南仏の色と温度を感じる展示

同じ建物内には、Musée Magnelli, Musée de la céramiqueのふたつの美術館が併設しており ヴァロリスの陶器産業の歴史や地元作家の展示、期間限定の企画展が行われています。

企画展では、Pierre Boncompain の作品が放つ女性の美しさに目が奪われました。


南仏の光を受けたかのような鮮やかな彩りが、外の冷たい空気をゆっくりと解かしていくように感じました。
絵具の層が陽だまりのように感じられたのが忘れられません。

黒髪美人

礼拝堂に描かれたピカソの傑作と、白い鳩

最後に、この美術館の見どころとなる、壁画のある旧礼拝堂です。

ここでは、旧礼拝堂の空間を覆うピカソの大作《La Guerre et la Paix(戦争と平和)》が、圧倒的な存在感を放っていました。

一方の壁に「戦争」、もう一方に「平和」が描かれています。暴力と破壊に満ちた世界と、人々が調和して生きる世界とを強烈な対比で表現されています。

「壮大」という言葉は簡潔すぎるかもしれませんが、この絵を表すのにぴったり。空間全体が作品に飲み込まれ、鑑賞するというより、作品の中に入ってしまう感覚になりました。

もっとも印象的だったのは、白い鳩です。


平和の象徴としての鳩はあまりに有名で、いろんなところで見かけます。でもここで見た鳩は単なる象徴というより、戦争の場面を含め、空間を支配する存在でした。

白が強い。強いのに、攻撃的ではない。そこにあるだけで、視線と呼吸の向きを変えてしまう存在に感じました。

町の教会へ

ミュージアムの余韻のまま、広場を挟んですぐのところにあるサン=タンヌ・サン=マルタン教会( Église paroissiale Sainte-Anne Saint-Martin)にも訪問しました。

人々の生活の中にある祈りの場所だからか、この日の人足はほとんどなく、空気が少し違いました。

静けさが勝ち、こちらの気持ちまで整っていく。教会の中に入ると、旅人の私まで守られているような安心感があります。

手仕事の町を歩く

教会から伸びる旧市街の細い坂道に、小さな陶器のお店やアトリエが点在しています。

早速お目当てのカフェオレボウルを探しましょう。

訪問したのはクリスマスの翌日だったためか、まるで日本の正月三が日のように静か。
その上午前中だったからか、ほとんどのアトリエの扉は閉まり、通りは穏やかな静けさに包まれていました。

カフェオレボウルを求め、開いているいくつかのお店に入りましたが……マグカップはあっても、カフェオレボウルはなかなか見つからない。

昔はグラースの香水の香料が作られる工場、今は芸術活動の拠点のネロリウム(この日はクローズ)

ヴァロリスでは結局、何も買いませんでした。けれど、ピカソが晩年を過ごした土地を知れたこと、また、別の機会にまた訪れたいと思える素敵なアトリエに出会えたのでよし。

街に潜むアート

歩く途中で気づいたのは、花瓶代わりに置かれた大きな甕や、陶器製の看板など、控えめに町角に溶け込んでいる陶器のアート。

どれも観光用ではなく、生活の一部として呼吸しているようでした。

街角のパン屋で買ったショソン・オ・ポムを頬張りながら、私は次の目的地、ビオットへ向かいます。

旅のメモ

行き方: ニースから電車TER(ZOU!)で約30分が便利です。旧市街の最寄り駅は Le Golfe Juan – Vallauris. 坂道が多いので、市内を走るEnvibus Ligne 08 の利用も便利です。

「【フランス生活】南仏でカフェオレボウルを巡る旅① ヴァロリス」への2件のフィードバック

  1. カフェオレボウルに出会う為の旅ってとても素敵ですね!ヴァロリス、訪れてみたいです。

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