【留学通信】AIの授業とOpenAIの基調講演にみる私たちの未来

Last Updated on 2025年10月12日

現在、学校でAIとBusinessがテーマの授業を受けています。
これは必須科目で、企業がAIという新しいテクノロジーをどのように理解し、取り入れ、戦略的に活用していくかを考えます。講義では技術的な内容だけでなく、倫理面にまで踏み込んでいて、AIが組織と人に与える影響を多角的に考察するという構成になっています。

毎度活発な議論のための事前予習を求められ、レポートを読み込むのにだいぶ苦労しています。

そんな中、先日、アメリカでOpenAIのCEOのSam Altman氏による基調講演(DevDay 2025 Keynote)がありました。基調講演の動画が公開された日の夜、担当教授からYouTubeのURLが共有され、「全員視聴必須」との指示がありました。

ケーススタディさえまともに終わっていない上に52分のなかなかのボリュームで、白目をむきました。私の作業時間は他の人の3倍以上がかかるのです。とりあえず文字起こし機能を使いながらキーワードだけ拾って授業に臨みました。

OPEN AIの基調講演はこちら

翌日の講義では、教授はAIとビジネスの関係を考える上で、このスピーチは歴史的な転換点になると評価していました。

今、その動画と講義内容を改めて見返し、少しずつ理解しかけている気がするで、まとめておこうと思います。もしかしたら勘違いしている部分もあるかもしれません。

2030年、ChatGPTは「OS」になる

Altman氏が講演の冒頭話していたのは、ChatGPTがもはや単なる対話型AIではなく、より「包括的」で「本格的なオペレーティングシステム(OS)」へと進化しているという内容です。

鍵となるのが「Model Context Protocol(MCP)」という新しい標準の開発により、AIが他のアプリケーションと共通言語のようなものを共有することで、AIが作業指示を出し、実行まで担うという世界が現実になろうとしています。

業務はAIで完結

講演では、実際にChatGPT内部で動作するアプリケーションのデモンストレーションが行われました。

たとえば OpenAIが公開した「Apps SDK」を使えば、ChatGPTの会話画面でアプリを簡単に構築できるようになります。ユーザーが「Figmaでこのスケッチを図面にして」と指示すれば、FigmaのアプリがChatGPT内で起動し、実際のデザイン作業を進めることができるといった感じです。

他にもCourseraのアプリで講義動画の解説部分をピンポイントで再生したり、Zillowで不動産情報を調べたり、Canvaでポスターやプレゼン資料を生成したりなど、こうした作業ががすべてChatGPTの画面の中で完結できるようになるとのこと。

これはもはや単に便利な機能という以上に、人とAI、そしてその他の関連システムとのつながり方が根本から変わることを意味すると思います。

「エージェントAI」という優秀な社員の爆誕

さらに講演では「Agent Kit」の開発についての紹介がありました。これはAIが自律的にタスクを実行する「エージェント」を構築するための斬新なツールです。

企業がこの仕組みを使えば、レポート作成や顧客対応、販売分析など、本来人が役割分担して行っていた業務をエージェントAIが自動で処理できるようになります。

講演では、米国の大手スーパーが実際に導入している事例が紹介されていました。売上が急落した商品の要因をAIが自ら分析し、過去の販売データや地域ごとの天候、販促状況などを踏まえて総合的な改善策を提示します。

これはまさにAIという優秀な社員が入社し、単に多くの人で分担していた作業を一人でこなすだけでなく、意思決定の補助や戦略提案まで踏み込んでくる段階に来ています。

より求められる「システム思考」

OpenAIの最新モデル「Codex」のデモンストレーションは、AIが人間の指示を理解し、複雑なシステムを自律的に構築・制御できる段階に到達していることを示唆したものでした。

授業の話に戻りますが、AIの時代に求められるスキルのひとつに「システム思考(Systemic Thinking)」というものがありました。

システム思考とは、相互依存的な構造を持つ複雑な組織やプロセスを、細かい部分ではなく全体として捉え、因果関係やフィードバックループを理解しながら持続可能な設計と意思決定を行う思考法を指します。

AIの時代に私たち人間に求められるのは、論理的思考力やクリエイティブ思考力に加え、(個別のタスク実行能力ではなく)全体を俯瞰し、設計、運用、監督していく力です。

授業を振り返って

授業では、医療や金融、農業といった特定の産業におけるAI戦略の立案や導入ロードマップの策定を通じ、テクノロジーの理解だけでなく、それらを使いながら「組織をどう変えるか」といった経営的な視点が問われました。

ChatGPTやAgent Kit、Codexが統合された世界では、事務やマーケティング、営業、さらにはマネジメントの一部までが自動化されます。

近い将来、AIがプロジェクトの進行を監視し、クリエイティブ素材を生成し、コードを修正し、意思決定にも踏み込んでくる。そんな時代に、果たして私が活躍できる場所なんてあるのだろうか。話を聞きながら、そんな不安がよぎりました。

AI時代に求められるのは結局「人間力」

今日の授業では、「AIには、感情を持つことはできるか」という問いがあり、クラスメイトの意見はかなり分かれました。教授の口から明確な答えはありませんでしたが、私はAIは情報から生まれる言葉しか発しないという点で、感情を持つことは人間にしかできないことだと思います。

人間関係を築くこと、感情を伝えること、そして新しい意味を創り出すこと。マネジメントの観点でいえば、他者への共感、モチベーションを引き出す力、チームを鼓舞するリーダーシップがこれまで以上に価値を持つようになります。

このような世界は、考え方によっては、効率性や競争に追われる働き方から解放され、人間らしさを取り戻すチャンスでもある気がします。そうなると、人々の価値観も変わっていき、人が働く場所というのはこれまでのオフィスやパソコンの前ではなく、人や自然に近いところ、意味や共感が生まれる場所へと移っていくかもしれません。

そうであれば、留学期間中はフランス国内の素敵な場所に足を運ぶ努力を怠らず、自分の心で美しいと感じるものを愛で、自分の舌でおいしいものを味わうことを通し、より感性を磨いていくべしと改めて思ったのでした。

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