【フランスワイン】光の衣装をまとう、冬のエペルネ散策

Last Updated on 2026年1月5日

12月中旬、シャンパーニュ地方エペルネで毎年開催される Habits de Lumière(アビ・ド・リュミエール)を見に行きました。
名だたるメゾンがひしめきあうシャンパーニュ通り(Avenue de Champagne)が光と音の演出に包まれる、3日間の冬のイベントです。華やかなイルミネーションのプログラムに合わせて、メゾンの特別公開や試飲も行われ、シャンパーニュの都らしい華やぎが街に満ちます。

今回の滞在は土曜と日曜の2日間。短いながらも、印象深い週末となりました。

パリからエペルネへ。少し遠回りの始まり

シャンパーニュの都で開かれる華やかなイベントですが、私自身の旅は貧乏旅です。
夜行列車を使い、土曜日の朝にパリの オステルリッツ駅(Gare d’Austerlitz) に到着。そこから ベルシー駅(Bercy Seine)へ移動し、BlaBlaCar Bus に乗り換えてランスへ向かいました。

BlaBlaCar Busは、長距離移動を低価格で提供するバスで、学生や週末移動の若者によく利用されています。時間はかかりますが、費用を抑えたい旅にはありがたい存在です。

ただし、このバスの到着地には少し注意が必要でした。
降車したのは Reims(ランス)市内中心部ではなく、「Champagne-Ardenne TGV駅」。名前に「Reims」とつかないこの駅は、市街地から離れた郊外にあり、エペルネ方面への接続があまり良くありません。

そのため一度、在来線で Reims Centre(ランス中心駅) まで戻り、そこからエペルネへ向かう必要がありました。しかし、次の電車までの待ち時間が長く、乗り継ぎにも思いのほか時間がかかりそうです。

迷った末、たまたまタイミングよく見つかった BlaBlaCarの相乗り を利用し、ランスからエペルネへ向かうことにしました。

指定された車は、青いテスラ。人生初のテスラ乗車です。
運転手は週末ごとにランスへ戻るという好青年で、道中ではランスからエペルネを結ぶ景色や、途中に位置するアイ村(Aÿ)などについて教えてくれました。

自然と話題はシャンパーニュへ。
この地方では、週末のアペロにシャンパーニュを開けるのは特別なことではないそうです。
祝いのための酒というより、日常の延長線上にある飲み物。その言葉を聞いて、この土地とシャンパーニュの距離の近さを、ようやく実感しました。

クリスマスツリーとシャンパーニュ通り

駅前に立つ大きなクリスマスツリーに、まず心を奪われます。その先には、湿った石造りの古い教会。祝祭と信仰、そして日常が、無理なく重なり合う風景が静かに広がっているように感じられました。

そこから シャンパーニュ通り へ向かいます。


祭りはすでに2日目に入っているはずですが、昼間の通りは意外なほど閑散としています。
どのメゾンも、いずれ劣らぬ重厚な佇まい。その建築を前にすると、この場所が積み重ねてきた時間の長さを、否応なく意識させられます。

モエ・エ・シャンドンの敷地内にも足を踏み入れ、観光客の例にもれず ドン・ペリニョンの銅像 を写真に収めました。

続いてブティックへ。大きなボトルや白を基調にしたパッケージがゆったりとした間隔で並んでいました。

リュクスな空間に身を置き、その洗練を味わいながらも、結局、今回は何も買いませんでした。
小さなリュック一つで来ていることもあり、ワインを持ち帰る余裕がない。というより、「ここでワインを買う」という発想自体が、どこか自分の中に欠けていることに気づきました。貧乏学生生活がだいぶ板についてきたようです。

ニースではあまり感じない冷え込みが、じわりと身にしみてきました。
街中で「コーヒーがおいしい」と評判のカフェに入り、一息つきます。温かい一杯が、ようやく身体を現実に引き戻してくれました。

夜、光がともるとき

夕方になると、再びシャンパーニュ通りへ向かいました。
イルミネーションが灯り始め、各メゾンの庭は、次第にクラブのような熱気を帯びていきます。

印象的だったのは、年配の人や三世代で訪れているような大人数の家族連れが多いこと、そしてフランス語話者が圧倒的に多いことでした。
観光イベントでありながら、どこか地元の人たちの社交場のようでもあります。

通りには、試飲用のシャンパーニュのほか、牡蠣などの軽食も並びます。ロゼのホットワインが目に入り、少し心が揺れましたが、ここは我慢。

Richard Orlinskの作品はニースの街中にも

しかし、大鍋で作られるタルティフレット(Tartiflette) の香りには抗えませんでした。
地元の若手生産者のワインに、サヴォワ地方の熱々のタルティフレット。寒さの中で味わうこの一皿は、実に力強いものです。

19時を過ぎると、光のプログラムが次々と始まり、歩行者天国となったシャンパーニュ通りは人であふれます。歩くのも一苦労なほどでした。

名残惜しさを感じつつも、早めにエペルネを後にし、ランスへ向かうことにしました。

夜のランス。記憶の重なり

ランスでは、駅前広場から延びるクリスマスマーケットを散策しました。

確か、10年ほど前に一度この街を訪れたことがあります。レオナール・フジタの礼拝堂や大聖堂、ヴーヴ・クリコのカーヴを見学したはずですが、記憶は驚くほど曖昧です。

特にクリスマスシーズンは、昼と夜とで街の表情が大きく変わるように感じられます。夜のランスは、過去の記憶を上書きするように、別の顔を見せていました。

マーケットには、貝殻を使ったアクセサリーが並んでいました。シャンパーニュは現在こそ内陸の土地ですが、地質学的には白亜紀の海に由来する石灰質の地層の上にあります。今も多くの貝の痕跡が眠っており、これこそがシャンパーニュの味わいに深みを持たせてくれるのです。

2日目の朝。パン・オ・ショコラとともに

翌朝、エペルネ駅近くのカフェで朝食を取りました。選んだのはパン・オ・ショコラとエスプレッソ。最近はこちらに来てから、ついこればかり選んでいます。

ボリュームがあり、おいしいのですが、これは前日の残りだな、とわかってしまいます。それでも、同じものを食べ続けていると、地域ごとの物価や感覚の違いが自然と見えてきます。どこにでもある組み合わせだからこそ、差が際立つのかもしれません。ボルドーなど一部の地域では「ショコラティン」と呼ばれることも思い出しつつ。

シャンパーニュの真髄を味わう

この日のメインは、グラン・クリュのシャンパーニュを味わうワインアトリエに参加することでした。
地元のワイン講師によるもので、市の公式イベントプログラムの一環として開催されていたアトリエです。

この日テイスティングしたミレジメは、次の2本でした。

Jean Pernet 2015 Brut Blanc de Blancs

シャルドネ100%。
爽やかな青リンゴや黄桃のアロマに、バターやパン・ド・ミを思わせるニュアンス。
張りのある酸の奥に、熟成由来の複雑さが折り重なり、まさに奥行きのある一本です。

Mondet 2012 Brut Prestige Millésimé

シャルドネを主体に、ピノ・ノワールとムニエをブレンドしたもの。
こちらはより果実味が前に出た印象で、親しみやすさがあります。

合わせて供されたのは、魚介のすり身を使ったテリーヌのような一品と、コンテやシャウルスといったチーズ。
ワインと合わせることで、味わいがふっと広がり、シャンパーニュの表情がさらに豊かになります。

参加者の多くはパリジャンで、地元シャンパーニュ地方の方も数名。
日本人は私のほかにもう一人いました。

その方は日本在住ながらシャンパーニュを深く愛し、頻繁にこの地を訪れているそうで、フランス語も非常に堪能。
職業にも共通点があり、不思議な親近感が湧きました。

こうした思いがけない出会いがあるから、旅はやはり楽しいのだと思います。

帰路と現実

帰りもエペルネからランスへ戻り、バスでパリへ向かう予定でしたが、乗り換え駅を間違えてバスを逃す、という小さな失敗をしてしまいました。
結局は高速鉄道で帰ることに。やれやれです。

それにしても、フランス人は時間を楽しむのが本当にうまい。
私はつい予定を詰め込み、それを消化することに力を注いでしまいますが、彼らの多くはそうではありません。立ち止まり、集い、話し、同じ時間を共有する。そのこと自体を、大切にしているように見えます。

そんなことを考えていたのも束の間、帰りの電車に乗った瞬間、試験直前であるという現実に引き戻され、ひとり冷や汗をかくのでした。

明日から新学期が始まります。それでもこうして夜な夜なに昨年のイベントの記事を書きはじめる自分がいます。

「【フランスワイン】光の衣装をまとう、冬のエペルネ散策」への1件のフィードバック

  1. とっても素敵ですね!エペルネ、是非訪れようと思いました。クリスマスシーズンのエペルネ、私の知らない世界です。憧れます。

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